JRSJ Vol.21, No.8
Vol.21, No.8 モジュラーロボット

モジュラーロボットは“鉄腕アトム”の漫画の中の“合体ロボット”に もあるように,昔から考えはありました.以前から,いろいろな試みが ありましたが,技術的問題もあり,研究開発があまり積極的に進められ ることはありませんでした.私が約20年前に“動的再構成ロボット”あ るいは“Cellular Robotic System”としてハードウェア,ソフトウェア ・システムアーキテクチャーの研究を始めてから,この分野でたくさん の卒業生が旅立ちました.このモジュラーロボットの研究を開始する際 に,当時の産業界の実状を目のあたりにし,大変強い衝撃を受けました.

1.メンテナンスロボットの研究をしているとき,石油貯蔵タンクの底に たまっているスラッジ清掃をいかに子ロボットでするか見ていました. 狭いハッチからロボットを分解して人力で持ち込み,中でもう一度組み 立て,外からロボットを遠隔揖作して,中のスラッジをタンク外に排出 するものでした.その作業後,ロボットを分解してタンクの外に出ます. タンク内は残りの石油の臭いで充満し,その中での組み立て,分解作業 は作業者の健康に耐えがたいものでした.これを自動化することが急務 でした.水力発電における送水管の検査も同様,狭いハッチから分解さ れたロボットを中に持ち込み,中で組み立て送水管検査後また分解して ハッチから出すものでした.

2.いろいろな種類のロボットを設計するときに,その状況に応じて設計 していました.沢山設計すると,なんだかサイズをその都度変えただけ の設計をしているように思え,このとき,一つのモジュールで組み合わ せ,目的仕様にあったロボットを統一的にできればと思いました.

3.いろいろ宇宙で使用されるロボットも,再合成されるリユーザブルな ロボットもまた同じだろうと考えました.

過去20年で理論研究も産業界での応用研究・実現例も出てきました.レ ゴロポットもおもちゃとして出てきました.私の発想も,漫画の世界や 子供のおもちゃからでした.しかしながら,研究を始めたころは,学会 からは受け入れられず大変でした.当時は同様の論文発表が他の研究者 からもないので,産業ロボットのツールのセッション等に入れられたり しました.状況が良くなったのは1987年のIEEEのRobotics and Automation ConferenceでCEBOTとしてRodney BrooksのSubsumptionアーキテクチャー の論文発表と同じセッションで発表して,また別の会議でDARPAが興味を 示してからでした.それから,分散ロボット等のセッションが1セッショ ンできるようになり,1990年代は問題なく受け入れられるようになりま した.いってみれば,モジュラーロボットが注目を搭びるようになった のはつい10年前のことであります.

モジュラーロボットは見方を変えるといろいろな研究分野を包含してい ます.ロボットの再構成(Reconfiguration),ロボットの自己組織化 (Self-organization),ロボット進化(Evolution),ロボットの耐故 障性(Fault tolerance),分散ロボット(Distributed/Decentralization) が今まで考えられてきました.ロボット同士の通信も大きな問題になる でしょう.これらは,単にロボットの分野にとどまらず,生物学や,生 物社会学等の生命の本質から学ぶことも多いと思います.

最近の会議からモジュラーロボットのセッションや論文を見ていると, もっと現実の問題を理解し,ハードウェアの伴った良い理論的研究が少 ないように思います.ハードウェア的に不可能な仮定の下に,いくら良 い理論を作ってもしょうがありません.モジュラーロボットの可能性を 求めて,もっと進歩がほしいものです.


(「モジュラーロボットの可能性」より)