JRSJ Vol.22, No.2 |
Vol.22,
No.2 ロボットの運動学習
近年,ヒューマノイドロポット研究が盛んになっている理由は,やはりロボットに人間のような能力を与えたいというロボット研究者の欲求であると思われる.ハードウェアとしては優れたヒューマノイドロポットが開発されつつあるが,人間の脳に相当するソフトウェアに関する研究は,まだ発展の途上にある.特に,現状のロボットは制御則の柔軟性において人間に遠く及ばない.人間のように,未知環境や環境の変化に適応可能なロボットの開発のためには,ロボット自身が経験を通じて制御方法を学習することが重要であると考えられる.今回の特集では,特にロボットの運動学習に関する研究を著者の方々に紹介していただく.運動学習は,ロボットの物理的拘束条件を考慮した上で,リアルタイムの運動制御を可能にする制御器を獲得することが必要であり,より高次の学習の基礎になっていると考えられる. 今回の特集は,ロボットの運動・行動学習について従来研究の流れを紹介するところから始まり,基礎的な運動学習理論,運動軌道の学習生成手法,タスクレベルでの学習手法,製品となっている運動学習ソフトウェアの紹介,そして最後に,今後ロボットの運動学習を考える上で必要となる考え方の紹介となっている. まず展望では,浅田稔氏(阪大)に運動学習の研究の現状と,運動学習から,行動学習,認知発達への繋がり,およびそれらに関するロボット研究について解説して頂いた.これによって,現在のロボットの運動・行動獲得に関する研究を概観できる.また参考文献を豊富に紹介して頂いているため,これからロボットの学習に関する研究を始めようとされる諸氏にとって役立つ資料となるだろう. 藤本健治氏(京大)には,ハミルトン系の対称性と反復学習制御について解説して頂いた.制御対象をハミルトン系に限定することで,制御対象の詳細な情報を用いずに,目標軌道を生成する入力系列の樫得が可能であることを示している.剛体リンク系などは,このハミルトン制御系の範疇に入り,ロボットの運動学習法として大変興味深い. 木村元・小林重信両氏(東工大)には,ロボットの学習における状態―行動空間の汎化について解説して頂いた.この解説では,強化学習を用いてロボットに運動獲得させる手法について分かりやすく配明している.また,連続の状態空間を扱う場合の関数近似手法や,近年注目を集めいる政策勾配法について紹介している. 中西淳氏ら(ATR脳情報研)には,運動学習プリミティブを用いたロボットの見まね学~ 習について解説して頂いた.この解説では,運動軌道を非線形力学系を用いて表現し,統計的学習手法により模倣すべき軌道を学習する方法を紹介している.この手法により,与えられた軌道を単純に再現するだけでなく,学習した運動軌道を環境に合わせて変化させることができることを示している. Anthony G. Fang(NUS)・Nancy S. Pollard(CMU)の両氏には,運動軌道の最適化手~ 法について解説して頂いた.単純に与えられた軌道を追従するだけではタスクが達成できない場合,ロボットの物理的拘束条件を考慮した最適化が必要となる.近年,コンピュータグラフィクスの分野で,物理的拘束条件を考慮した軌道生成を高速に実現するための研究が盛んになされている.この解説では,その最新のアルゴリズムについて紹介している. Darrin C. Bentivegna氏ら(GA Tech.)には,行動プリミティブを用いた見まね学習について解説して頂いた.人間やロボットの運動学習において,見まね学習は,短時間で運動課題を達成するために重要な役割を果たす.見まね学習を行う場合,運動課題ごとに,重要な行動単位が存在すると考えられる.そこでこの解説では,エアホッケーとマーブルメイズ課題を例に,人間の運動や行動を観測することから,行動単位を抽出し,さらにロボット自身でそれを試行錯誤的に改善する手法について紹介している. 永嶋史朗氏(富士通研)には,ヒューマノイドロポット動作生成システム「NueROMA」~ について解説して頂いた.「NueROMA」は,ユーザーがGUIを用いて運動生成のための学習システムを構築できるなどの機能を持つ.このようなシステムを提供することは,今後ロボットの学習がより実用的になる上で重要な要素になると考えられる. 細田耕氏(阪大)には,形態が学習にもたらすもの,学習が形態にもたらすものについて解説して頂いた.ロボットの運動学習では,ロボットの力学的拘束条件下での最適化問題を解くことが多い.その場合,学習アルゴリズムのみではなく,ロボットの物理系そのもののデザインが重要となる.この解説では,その点を指摘した上で実例を通じて今後のロボットの学習法の進むべき方向性を与えている. 以上,最先端のロボットの運動学習に関する研究について,一線で活躍する若手の研究者の方々に解説して頂く.読者の方々に興味を持って頂ければ幸いである. (「特集について」より)
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