JRSJ Vol.22, No.3
Vol.22, No.3 ロボットと知的財産

日本は技術立国から知財立国へ大きく舵を切りつつある. 2002年11月27日に「知的財産基本法」が成立した.内閣に「知的財産戦略本部」が設置され,大学・事業者などの「責務」が明確になった.ロボット研究者もこの大きな流れを避けて通れない.
本特集では,知的財産の動きについで情報を提供することと,我々が実際に特許を書き権利を行使するときのガイド(特許の書き方,使い方)を提供することの二つを目的としている.また具体例として組織別の事例を紹介する.

本特集は大きく4部に分けて構成した(図1).

第1部
このセクションでは現在の知的財産環境を正しく知るための情報提供を目的としている.
・第1章は知的財産の全体像をとらえるために,日本の知的財産政策の最新動向について知的財産戦略本部の議員である阿部博之先生に展望を執筆していただいた.
・第2章はロボット技術の動向を特許出願内容から分析した結果を,特許庁の佐々木正章審査官に「ロボット特許動向調査結果」の最新結果として紹介していただいた.
・特許だけが知財ではない.意匠や著作権も重要な知的財産である.第3章はデザイン面からロボットの知財をとらえた場合の現状と問題点を,ロボットデザイナーの園山隆輔氏に解説していただいた.

第2部
この部では我々が実際に知財の権利を取得し活用しようとするときに,役に立つ内容の執筆をお願いした.
知財を取り扱うときには知的創造サイクルモデルが手がかりとなる.知の創造,権利化,権利の活用のステージごとに実用ガイドとなることを目指している.
・第4章は知的創造サイクルそのものの紹介を,特許庁の仲村靖班長にお願いした.
・第5章はサイクルの第1ステージ(知の創造)のガイドを,カーネギーメロン大学の金出武雄教授に執筆していただいた.研究開発への心構えや取り組み方によって,豊かな発想が得られることを体験から解説していただいている.
・第6章では第2ステージ(特許の取得法)のガイドを,日高一樹弁理士に執筆していただいた.特許取得の手続きや明細書の書き方など,具体的な情報を提供していただいた.
・第7章では第3ステージ(権利の活用)の指南として,富士通研究所の渡部勇主任研究員に技術調査の手法を紹介していただいた.テキストマイニング技術を応用したソフトウェアにより,膨大な特許データベースから情報を抽出するツールが紹介されている.

第3部
大学,企業,研究機関の方に,知財への具体的な取組法を運用事例として執筆していただいた.業種に特有な課題や方法を実例とともに紹介していただいている.
・第8章は独立研究機関の知財について,(独)産業技術総合研究所知的財産部三原裕三部長に執筆をお願いした.
・第9章は大学における知財の取り組みとして,東工大フロンティア創造共同開発センターの喜多見淳一教授にTLO制度,組織,運営について執筆していただいた.
・第10章は企業における取り組みとして,東芝の松日楽信人研究主幹をコーディネータとして富士通研究所,富士重工業,ファナックの事例を紹介していただいた.

第4部
上記に含まれないトピックスを執筆していただいた.
・第11章では現在の知財の課題に焦点を当て,知財との付き合い方の注意点を,愛媛大の石原謙教授に警笛を含めて指摘いただいている.
・第12章には,この特集号だけでは扱いきれなかったより深い情報を得るためのリンクを掲載した.

最後に,御多忙中にもかかわらず,本特集号へご寄稿くださった執筆者の皆様に心から御礼申し上げます.
これらの情報がロボット研究者に少しでもお役に立てれば幸いです.

(「特集について」より)