JRSJ Vol.22, No.7
Vol.22, No.7 ロボットシティ

シティとは人が生活するために高度に整備された環境であり,人の営みがスムーズに行われるように数々の工夫が施されている.また人のためにソフトウェアを盲めた改造が絶え間なく続いている空間とも考えることができる.人々が恩恵を受ける機能でありさえすれば,シティのみならず,その人々までもがその機能を取り込もうと変化を始める.

ひとたびロボティクスの機能がシティに浸透し始めると,人間の生活様式もその時点から劇的に変化を始め,ロボティクスと人間社会が有機的に結合した新たな時代が予想を超えた速さで訪れるに違いない.最近では携帯電話が良い例である.1987年にサービスが開始され,ものの数年で我々の生活に浸透したことは記憶に新しい.「会話している最中に携帯電話を取るとは無礼な」,一人でいたはずの人が突如笑い出して驚いた」,「あの小さな限られたキーでメールなんて」と散々な言われ方もしたが,失礼,迷惑,制限されたインタフェース以上に便利が勝った.今では,反対に携帯電話を所有しないことが話題となったり,その利用に随分寛容だったりする.社会通念が便利技術に遅れて追従するようにも思える.

ロボットが携帯電話のようにシティのあちこちで利用されるようになるのは,まだまだ先の語なのであろうか?回りを見渡せば,ロボティクス関連技術を用いた製品はいくらでもある.実は「じっとしているもの」として何気なく利用していたものが,ロボット化して,ゴソゴソ動き出す日もそう遠くないようにも思われる.

最近,人々の生活環境での有効利用という観点から,実験室のロボットをシティに持ち出す試みが盛んに行われている.そこには,社会に役立つためには何が大事で,何が現在のロボットに不足しているのか分かり,現状技術との接点が明確になるという期待がある.ロボットを出されたことで,何がシティに欠けているのかが見えてくる.ロボットとシティを育てていけば,それが地域産業の復興につながるという夢もある.関係者の様々な願いが込められて,各地でロボットシティに向けてのプロジェクトが矢継ぎ早に立ち上がっている.

本特集では,各地域で取り組まれている,ロボティクス技術をシティに出し活用する様々な事例について,関連されている産官学の方々,当該分野でご活躍の方々に執筆いただき,ロボットシティの切り口を,読者に提供していただくことが目的である.切り口として本特集で掲げたテーマを以下に列挙する.

【ロボットシティへの各自治体の動き】
藤元正二氏(福岡県庁),稲葉昭夫氏(岐阜県情報技術研究所),美漉地研一氏(大阪産業創造館),宮本孝二氏(神奈川県庁)
ロボットシティに関して,主に自治体担当者からの視点で記述をお願いした.例えば,各地での取り組み,研究に関する行政側のサポート(法の整備,環境の整備,研究予算措置,製品化に向けての支援,窓口等),研究者や技術者がその地域で,もしくはその地域のために何か研究をやつてみたくなるような内容について記述していただいた.

【ロボットシティへの具体的アプローチ】
松野文俊先生(電通大),浅田稔先生(阪大),山本元司先生(九大),横山和彦氏(安川電機)
ロボットシティに関連する,これまで行ってこられた研究の紹介,もしくは現在考えておられる研究の概要や構想,そして・予想を含めた様々な問題点の呈示,さらに,これまでの研究に根ざした視点からの研究のアプローチや解決方法の示唆,読者がロボットシティに関して何か新たな研究・開発テーマが想起できそうな内容等に関して執撃をお願いした.

【ロボットシティヘの提言】
北野宏明氏(SonyCSL),室山哲也氏(NHK)
ロボットをシティに出すという研究や試み,起業活動,産業創出に関して,現在のお立場から様々な切り口でのご意見をお願いした.

【ロボテイクスの人やシティとのかかわり】
森英雄先生(ロック),杉本池先生(北九州市大),寺田賢治先生(徳島大),毛利嘉孝先生(九大)
ロボットをシティに持ち出した場合,人やシティヘのかかわりがまず重要になってくる.ロボットやその機能の一部をシティに出された研究・開発事例の紹介,ならびに問題点の呈示をお願いした.毛利先生には,社会心理学のお立場で執筆いただいた.

ロボットシティ全体から考えるとテーマ設定としてはまだまだ不十分であるが,誌面の都合もあり,まず先に挙げたテーマに焦点を絞った.本特集の企画編集は,長谷川勉(九州大)と大城英裕(大分大)が行った.最後にお忙しい中,本特集のために執筆していただいた筆者の方々,および助言,協力していただいた方々に心から御礼申し上げる.

(「特集について」より)