JRSJ Vol.23, No.4
Vol.23, No.4 「ロボット工学今昔物語」特集について

 大勢の観客の中でワーキングロボットが活躍している愛 知万博が開幕しました.6月9日からは,将来性が期待さ れる63種類のロボットが一堂に介する「プロトタイプロ ポット展」も開催される予定になっています.工場の中だ けで働いていたロポットが,広く一般世界に登場しようと しています.マイコンや新しいセンサ,小型モータの開発 および通信技術の発展などで,ロボットの世界が大きく変 わりつつあります.一方で,学問としてのロボット工学は 今どのような位置にあるのでしょうか.新しいロボットや システムが次々に開発・提案されている現在,今一度古典 に立ち返り,新たなロボット工学の発展を考えるのも意味 のあることのように思われます.また,若い研究者の方々 の中にはロボット研究が始まったころどんな研究がなさ れ,どんな発想がされていたかをご存知ない方も増えてき たと思います.そこで,本特集号では,「大御所の先生方 に,ロボット学会が発足する前後の研究内容やそれぞれの ロボット技術の古典に関して,具体的に話していただく」 ことにいたしました.この特集号によって,ロボット工学 において古典となっている理論や考え方,技術を知ること で,現在のロボット工学の基礎を知り,ひいては今後の研 究の進展の助けになれば幸いです.

  古典と呼ばれる技術や理論は様々な分野にわたっていま すが,今回の特集号に載せる分野は,企画担当者の全くの 独断で決定いたしました.これ以外にも重要な分野がある とのご指摘は多々あるかと思いますが,お許しいただきた いと存じます.集まった原稿は,単に過去の研究の紹介と いったものではなく,お書きくださった先生方の個性あふ れるものとなっております.ロボットを研究するための指 針となる哲学,発想の方法が述べられています.そしてな によりそれらの研究をしておられた頃の息遣いや思いがあ ふれています.ロボットを研究しておられる読者に勇気と 活力を与えてくれるに違いありません.

  まず,森先生には,ミニコンもなかった頃に始められた ロボットの先駆的な研究ならびにロボットを用いた創造性 教育とその教育効果について書いていただきました.

  ロボットと生物の関係については,いつの時代も大きな 興味がもたれています.鈴木先生には,筋電流を利用して 動く義手,ヒトデの起き上がり行動,魚の群れのモデルな ど,その後のロボット研究に影響を及ぼしたバイオニクス に関する研究を解説していただきました.また,ロボット 研究の初期の段階から生物型ロボットを開発してこられた 梅谷先生には,生物型ロボットを開発する際の重要な指針 を述べていただくとともに,ヘビロボットなどの具体的な ロボットについて振り返っていただきました.

  一方,人とロボットの関係の例として,白井先生には, 「ロボットのビジョンと知能」と題して,画像から情報を 抽出する方法論ならびに人工知能からロボットへアプロー チした研究に関する古典を紹介していただきました.また, 現在盛んに行われているロボットの医療・福祉分野分野へ の進展の古典として,ドイツで開発されたCO2のガス庄を 動力源とする初期の義手からその後の医療・福祉分野ロボ ットの変革を斎藤先生に書いていただきました.

  以上のような具体的なロボット研究とは別に,個々の技 術要素に関する研究を振り返って,有本先生には,ロボッ トの運動を支配する非線形系に対するいわゆるPD制御を 概説していただくとともに,ロボットの未来にとって重要 と思われるPD制御の将来を語っていただきました.吉川 先生には,マニピュレーション技術の基礎となる理論を概 説していただいた後,その中の可操作性と動的ハイブリッ ド制御の概念について述べていただき,長谷川先生には, ロボットの動作をフェーズに分け,その各フェーズに対し て開発されたセンサ群とこれらを統合してロボットを制御 するためのシステムについて,書いていただきました.

  移動ロボットに関しては,津村先生に,初期の車輪式移 動ロボットと位置計測センサの開発に関する研究ならびに ロボットの試作段階での企業との協力の重要性を,江村先 生には,倒立振子の制御の研究から始められ1972年に動 的歩行に成功した2脚ロボットの開発と姿勢センサのため の三半規管の研究,ならびに最近の走行可能な2脚ロボッ トについて書いていただきました.

  最後に,井上先生が実践してこられた,多くの研究者が 道具を自ら準備しロボット作りに参加することができるト ランスペアレントなロボットシステムの考え方とその具体 例について今昔物語を書いていただきました.

  執筆者の先生方にはご多忙の中快く原稿依頼を引き受け ていただきました。また,予定より本特集号の発行が早ま り大変ご迷惑をおかけいたしました.ここに,お礼とお詫 びを申し上げます.本特集号「ロボット工学今昔物語」の もともとの発案者である編集委員会の委員長浅間一先生, 前委員長の生田幸士先生をはじめとして,編集委員会の 方々から数々のサジェッションをいただきました.心から お礼を申しあげます.     (眞島澄子 筑波大学)

(「特集について」より)