JRSJ Vol.24, No.1
Vol.24, No.1 ロボットキット」

これまでロボットに関する様々なビジネスは多くの期待
を集め,産業用ロボット以外のマーケットを開拓すべく,
様々な努力がなされてきた.しかしながらその多くは,研
究目的や展示目的などの限定されたマーケットとなってお
り,必ずしもビジネスとして成功しているとは言いがたい
のが現状であろう.

  一方で,近年,教育用ロボット製作キットやホビーの小
型ヒューマノイドロポットキットなどがあいついで製品化
され,一部はそれなりに商売になっているようである.ま
た,オリジナルのロボットキットを含め,これらのロボッ
トキットを用いた教育も盛んに行われるようになってきて
おり,一般的で有効な教育手段としてのロボットキットの
利用が徐々に定着しつつあるのではないだろうか.

  このロボットキットを用いたロボット教育はロボットの
ユーザーや研究開発者としての入口となるし,キット自体
がロボットビジネスという意味での現実的な一つの出口と
して考えることができる.そこで,教育とビジネスの両面
からロボットキットをとらえて本特集を企画することとし
た.

  ロボットを用いた教育,あるいはロボット工学の教育に
関する特集については1985年第6号の「ロボットと教育」,
また1998年第4号「ロボット教育」においてすでに様々
な教育事例が紹介されている.ものづくりの実践的教育と
して,また,デザイン型教育としてのロボットによる教育
の重要性は従来から変わりないと考えられる.

  しかし,明確な教育目標のもとで,確実な教育成果をこ
のロボット教育であげていくことは,時間,資源,スタッ
フなどの点で教える側の大きな負担となる.このとき,適
切に設計されたロボットキットを用いることは一つの現実
的な解決策であろう.また,近年では2足歩行ロボットの
競技会であるROBO-ONEなどのロボット競技会により,
趣味の世界としてのロボット愛好者が増えてきており,こ
れらの要望を取り入れた2足歩行ロボットキットもいくつ
か市販されている.

  このような現状を踏まえ,教育用ロボットキットの開発
に関わってこられた方,ロボットキットを用い教育を実践
されている方,ホビーの世界におけるビジネスとしてロボ
ットキットを開発されている方にロボットキットの現状,
目的,効果,魅力などを解説していただくことにした.

  はじめに,早くからロボットキットの有効性を認識され,
特に子供たちの科学教育のためのロボットキット「梵天丸」
を開発し,様々な教育活動をしてこられた東北学院大学の
岩本先生ほかに,この「梵天丸」キットと活動の概要を紹
介していただいた.ロボカップやROBO-ONEに関わって
おられるヴイストン(株)の大和氏には開発された小型ヒュ
ーマノイドロポットキットを用いた高校向けの教育実践例
を,また,芝浦工大の水川先生には大学低学年向けのロボ
ットキットの紹介と教育実践例を執筆いただいた.ロボッ
トキットを用いた教育内容をどのレベルに設定し,どのよ
うな実習内容,そしてキット内容とするかが一つの鍵であ
り,その点を含めた解説をしていただいた.

  2足歩行ロボットなど自由度の高いロボットキットを考
えるとき,どうしても高価になりがちである.神奈川工科
大の高橋先生には安価に構成された2足歩行ロボットキッ
トを紹介していただいた.ここで紹介されている手法はロ
ボットに限らず,制御・メカトロニクス教育に対しても有
効ではないかと考えられる.

  ロボットキットを教育に活用するとき,しばしば指摘さ
れることが教育効果に関する点であろう.久留米高専の熊
丸先生はこの問題に取り組まれ,教育効果測定手法に関す
る一つの成果を紹介いただいている.ロボット・メカト
ロ・制御系研究室に配属される学生の導入教育としてもロ
ボットキットの活用は有効であると考えられる.そこで早
稲田大学の石井先生ほかには,市販の教育用ロボットキッ
トをベースにした研究室学生への導入教育について執筆い
ただいた.ロボットによる教育事例としては大学や高専,
小中学生に対する事例がこれまで多く報告されている.し
かしながら,工学教育における専門学校の役割も重要であ
る.そこで日本工学院八王子専門学校の福田先生に,ロボ
ット科におけるロボットキットを用いた実践的な教育事例
を紹介していただいた.

  ロボットキットの出口すなわちビジネスとして,教育用
キット以外の可能性としてホビーの分野も重要だと考えら
れる.様々なロボットコンテスト向けキットや,大人でも
楽しめる趣味としてのロボットキットなど様々な商品が考
えられる.ここでは,ROBO-ONEやホビーロボットに詳
しい梓氏に趣味の世界としてのロボットを解説していただ
く.

 以上,この特集により,ロボットキットの有効な活用方
法や新しいビジネスのヒントを見出せていただければ幸い
である.           (山本元司 九州大学)

(「特集について」より)