JRSJ Vol.24, No.8
Vol.24, No.8 「空中ロボティクス」

人間が空を飛行することが可能になってからまだ一世 紀,一般人が乗客として飛行することができるようになっ てまだ半世紀しか経っていないところへ,果敢にもその空 へ乗り出していくロボットたちがいます.本特集では,そ んな勇気あるロボットたちを取り上げました.とはいえ, 実野に勇気があるのはロボットではなく研究開発者の方で あり,その勇気に絶大なる敬意を持ってここに特集いたし ます.なにしろこの種のロボット開発は誰もが認める茨の 道なので,失敗談満載の奮戦記のような記事も多数ありま す.また,航空,制御,精密機械,果ては軍事関係まで, 様々な分野の方々に執筆いただくことにより,この種のロ ボットの,裾野の広さや将来展開の大きさを読者に感じて いただけたらと思います.

本特集企画のコンセプトは,日本ロボット学会誌で最初 の空中ロボティクス特集ということで,現在走っている空 中ロボティクス研究を可能な限り一挙掲載し,24/8号を本 分野におけるマイルストーンとするものです.現在,空中 ロボティクスの形態は,ヘリコプターに代表される翼を回 転して揚力を得る原理を用いたものと,国定した翼に推進 力で空気の流れを形成し揚力を発生させて飛行する固定翼 機,そしてヘリウム等の大気より比重の軽いガスを充填し その浮力で飛行する浮力系の3種類に大別されます.前半 の展望記事では,回転翼,固定翼,浮力系,業界団体の各 視点から見た空中ロボティクスの将来展望をそれぞれ野波 先生,鈴木先生,川端棟,高井様にご執筆いただきました. 後半の研究例紹介には,日本ロボット学会誌史上初の空中 ロボティクス特集という特性から,本24/8号がその後の 空中ロボティクス研究の出発点となるのか,既に中間地点 なのか,または本命技術はまだ萌芽していないのかを,読 者,ひいては世に問う役割があります,このため,後半の 研究例紹介は数を重視することで現状をより正確に読者に 伝える試みをいたしました.とはいえヤマハ自律無人ヘリ RMAXなど今回紹介しきれなかった重要な研究事例もま だまだたくさんありますことをご理解ご了承いただきます よう宜しくお願い申し上げます.研究例紹介は可能な限り ロボットやシステムの写真を掲載していただき,読者に直 感的に理解いただけるよう配慮いたしました.またあらゆ る分野の皆様からご執筆いただきましたことから,学会誌 然とした文面か否かにかかわらず敢えて掲載し,分野の広 がりを感じていただけるようにいたしました.

空中ロボティクスは,新しい形態の新規産業を創造する という大きな可能性を秘めています.現行の航空産業はイ ンフラ(空港)を中心としたシステムであるが故にトップ ダウン型産業です.よって現行の航空産業の発展はインフ ラの発展と共にありますが,インフラの発展は日本の国土 状況では将来あまり期待できません.しかし日本のこの分 野の発展は,インフラ主導型でないボトムアップ型の空中 ロボテイクスから派生する新しい形態の航空産業によっ て,従来産業の延長としてでない方向でもたらされると考 えられます.本特集で登場してきた多くの空中ロボットは, 垂直離着陸であったり小型であったり手投げ発航やパラシ ュート回収などが可能であったりする理由から,早くも滑 走路や空港,特別な施設を不要とするボトムアップ型シス テムの黎明期の様相を呈しております.今後,様々なアプ リケーションヘの応用が展開されるにつれて,空中ロボテ ィクスは社会に利便性を提供する基幹技術となっていくこ とでしょう.その意味で空中ロボティクスがわが国にもた らす影響は大きく,その草分けとなる本特集記事は後世重 要な価値を帯びると考えております.

以上の空中ロボティクスの意義と使命をも越えた信念の 下に研究開発を行って来られ,ご多忙の最中今回ご執筆い ただきました諸先生の皆様には,心から厚く御礼申し上げ ます.また,前例のない特集テーマとの悪戦苦闘を叱咤激 励いただきました淺間,金子両編集委員長,もう一人の編 集担当の川端様,編集委員会の諸先生方,学会事務局の皆 様のご支援に感謝申し上げます.

(岩田拡也 産業技術総合研究所)

(「特集について」より)