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新しい和文誌論文査読システムに関してのお知らせ(日本ロボット学会誌)

 会員の皆様に新しい和文誌論文査読システムに関してご報告させていただきます。
 これまでに、論文を学会和文誌に積極的に投稿していただくように様々な試みがなされてきました。その一つは論文特集号の企画です。今年度で7回を数えた学術講演会論文特集号は既に皆様ご存知の定番企画となっています。その他にも、ロボット学にとって非常に重要ではあるが、従来の査読基準では採録が難しかった分野の開拓を目指して、つくばチャレンジ論文特集号と教育論文特集号が企画され、多くの貴重な論文を採録することができました。つくばチャレンジ論文特集号はシステム統合化技術と実証実験に焦点を当てて、ロボットのシステム作りや実用化に有用な情報を積極的に掲載する方針で編集されました。教育論文特集号はロボットを題材として教育に活かす様々な取組に関して、そのノウハウ的な事項に関しても積極的に評価することで、貴重な情報を論文として公表することができました。この2つの論文特集号が非常に好評であったことを受けて、理事会でも論文評価の多様化に関して議論があり、今回の改革に着手することになりました。また、論文の査読判定結果に関して、採録不可(再投稿を勧める)という判定では、どこまで論文を改定すれば採録されるのかの条件が不明確で、会員の方々から色々なご意見をいただいており、この点も今回の改革では考慮いたしました。新しくなった点を以下にご説明します。

1.論文評価の多様化
 論文の種類は従来通り、総合論文,学術・技術論文,解説論文,研究速報,討論と変更はありません。論文の評価は学術性を新規性と変更し、(A.) 新規性、(B.) 有用性、(C.) 提案性 の3つの評価軸となります。その定義を以下に示します。
(A.) 新規性:
ロボットに関する科学と技術の全般を対象とし, 新たな知見などが含まれていること.
(B.) 有用性:
ロボットを利用して問題解決等に有用であること.ただし,実用化以前の萌芽的な内容も評価する.
(C.) 提案性:
ロボティクスに寄与する新しい学術・技術領域,コンセプト,システム概念などが提起されていること.
 また、今回の大きな変更点は以下の様に、論文を4分野に分けて、分野の特殊性を考慮した査読を行い、会員にとって有用な情報を論文として評価し、採録するとしたことです。また、査読の判定結果に「条件付き採録」を設け、採録のための条件を明確化することとしました。
●論文のカテゴリ:
(1)要素,(2)システム設計・構築,(3)人材育成・社会,(4)実証実験の4分野に論文を分類する.
(1)要素:
センサ,コンピュータ,アクチュエータ,機構,モデリング,制御等の基幹要素に関する科学・技術
(2)システム設計・構築:
センサ,コンピュータ,アクチュエータなどの要素を含み,システム設計・構築やシステム統合化に関する科学あるいは提案または技術的工夫
(3)人材育成・社会:
ロボットを用いた教育手法の提案や教育効果の評価あるいはロボットの社会への係わりに関する考察
(4)実証試験:
ロボットの実用化を視野に入れた実証実験や安全性に関する提案・検証
●論文のカテゴリに則した評価:
査読小委員会をカテゴリごとに独立させて、査読に際してもカテゴリの特殊性を考慮して評価を行う.
●採録の可否の判定:
採録可,修正後採録可(再査読なし.修正事項の確認は各カテゴリの査読小委員会で実施.),条件付き採録可(再査読あり.条件が満足されれば採録可.),採録不可 の4つの判定を設け,迅速かつ適切な査読を実施する.
●査読小委員会構成
委員長:川村 貞夫(立命館大学)、幹事:松野 文俊(京都大学)
副委員長(要素分野担当):次期会誌編集担当理事
副委員長(システム設計・構築分野担当):野田 哲男(三菱電機)
副委員長(人材育成・社会分野担当):琴坂 信哉(埼玉大学)
副委員長(実証実験分野担当):永谷 圭司(東北大学)
の体制で運営いたします。また、それぞれの分野における査読基準は別途公表させていただきます。

2.論文投稿査読システムScholarOneManuscripts の導入
 皆様の論文投稿手続きの簡易化、査読者の方々の負担軽減、事務作業の効率化などを視野に入れて、JSTの支援を受けて新しい論文投稿査読システムとして欧文誌と同じScholarOneManuscriptsを導入することになりました。2014年3月17日からの運用を目指して、会誌編集委員会で準備を進めております。従来通り、学会のHPから論文投稿査読システムに入ることができます。

 以上のように、和文誌に関して新たな論文投稿査読システムの導入、論文に対する評価軸と査読判定に関する変更が実施されます。国際化の波が本学会にも押し寄せてきており、和文論文の投稿数は減少しておりますが、日本の学会として会員へのサービスを考えた場合に和文誌の存在は大きいと思いますし、会員にとって有用な情報を迅速に公表できる媒体としてうまく活用するために、今後も様々な改革が必要だと感じております。本学会は欧文誌Advanced Roboticsと和文誌日本ロボット学会誌の両方を発行しており、双方の強みを活かして日本のロボット学のプレゼンスを高め、産業界との正のフィードバックで日本のロボット産業基盤強化に少しでも貢献できればと考えております。

皆様の積極的な論文投稿をお待ちしております。

2013年度日本ロボット学会 会誌編集委員会 委員長
松野文俊(京都大学)
2013年度日本ロボット学会 会誌編集委員会 副委員長
田中一男(電気通信大学)