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第3回インターナショナルロボットハイスクールIRH2017実施報告

2017/12/26
日本ロボット学会 IRH2017実行委員会 幹事 細田祐司

開催概要

主催:一般社団法人日本ロボット学会

共催:一般社団法人日本ロボット工業会,日刊工業新聞社

協賛:
ロボコンマガジン(株式会社オーム社),トヨタ自動車株式会社,
三菱電機株式会社,株式会社安川電機

開催日:2017年12月2日(土),3日(日)

開催地:東京ビッグサイト 会議棟7階 703会議室

企画:IRH2017実行委員会

委員長: 澤 俊裕(RSJ会長,安川電機)
幹 事: 細田祐司(RSJ庶務理事・事務局長)
委 員: 野田哲男(大阪工業大学),柴田智広(RSJ国際理事,九州工業大学),中臺一博(RSJ国際理事,ホンダ・インスティチュート・ジャパン),琴坂信哉(RSJロボット教育事業計画委員会委員長,埼玉大学),多田隈理一郎(RSJロボット教育事業計画委員会委員,山形大学),横田 祥(RSJロボット教育事業計画委員会委員,東洋大学),林 英雄(共催,日刊工業新聞),山本雅之(共催,日刊工業新聞),矢内重章(共催,日本ロボット工業会),矢野友規(協賛,オーム社),可香史織(協賛,オーム社)
主催: 共催:
協賛:

主旨

当学会の教育事業の一環として,国内外の高校生を対象とし工学教育事業を実施

国際ロボット展にて展示物の課題付の調査研究をしてもらい結果を発表してもらう

優秀発表に対し贈賞

各校のロボット工学教育の実践について情報共有してもらい,国際交流を体験してもらう

ロボット工学者育成促進及び将来の会員候補の確保

実績

国際ロボット展とのコラボで,過去2回ロボットハイスクールを実施.50名規模の国内高校生を対象に,産業ロボットを直接手に触れる1日コースの企画を実施.

2013年のIROS2013の東京開催に併せて,国際事業の一環として第1回インターナショナルロボットハイスクールIRH2013を実施し,今回の第3回まで国際ロボット展が開催される奇数年度毎に継続して実施してきた.
 今回の開催を含めこれまで,下記のように毎回参加員数,参加国を拡大しており,本格的な国際教育事業になってきた.

表1.参加実績の推移

実施年度 総数 国内 国外 参加国 協賛
2013年 第1回 参加者 109 91 18 4か国:中国,日本,ノルウェー,米国 2社
参加校 19 16 3
2015年 第2回 参加者 115 34 91 6か国:ブラジル,中国,日本,韓国,メキシコ(2校),米国 5社
参加校 13 7 6
2017年 第3回 参加者 129 36 93 8か国:ブラジル,中国,日本,韓国,フィリピン, シンガポール,メキシコ,米国 4社
参加校 13 6 7

参加校(学校名をクリックすると学校紹介データを参照できます)

FIEC - Fundação Indaiatubana de Educação e Cultura(ブラジル)

栃木県立宇都宮工業高等学校

Waialua High & Intermediate School(米国)

豊田工業高等専門学校

Pui Ching Middle School, MACAU(中国)

和歌山工業高等専門学校

National Junior College(シンガポール)

岐阜県立飛騨神岡高等学校

CETIS 26 Technical High School(メキシコ)

宝仙学園高等学校

Seoul Robotics High School(韓国)

立命館慶祥高等学校

Caritas Don Bosco School(フィリピン)

※クリックで拡大


実施報告

1.開催内容:詳細スケジュール

12月2日(土)

課題調査:国際ロボット展会場

12月3日(日)

研究発表会:iREX2017調査報告

表彰式


2.課題調査:国際ロボット展会場

産業ロボット及びサービスロボットに関する下記の研究課題を事前に選択頂いた上で,各校にて事前研究を進めて頂き,初日にiREX会場で生徒による自主調査を実施してもらった.その結果を集大成し,2日目の研究発表の準備をしてもらった.

2017国際ロボット展展示案内図

2017国際ロボット展HP

<国際ロボット展会場での調査>


<研究課題の内容>

課題1.産業用ロボット(製造業向け)の設計と基盤技術の体系化
 この課題は,ロボットを構成している基盤技術を知って頂くことを目的とする.
 下記に挙げる3種類の,産業用ロボット(製造業向け)の基盤技術の中から一つを選び,それに含まれる技術の種類,動作原理等について調査を行い,その全体像が把握できるように基盤技術を分類,整理して発表すること.
<選択肢>
(1)センサー技術
(2)機械要素(アクチュエータ,減速機,機構,素材,システム)
(3)ロボットを使うための技術(安全技術やシステム・インテグレーション技術)

課題2:ロボットの使途とその性能の関係
 この課題は,ロボットがその使用目的や使われる環境に適合するように大きさ,出力や機能等がデザインされていることを知って頂くことを目的とする.
下記に挙げる3種類のロボットの使途の中から一つを選び,その使途とロボットの性能(特徴,機能,構造,構成,仕様等)との関係を調査して発表すること.
<選択肢>
(1)製造業向け(自動車向け,電気・電子向け,医薬品向け,化粧品向け,食品向け等)
(2)非製造業向け(ビル清掃,災害,インフラ維持,警備,医療,介護,農林水産業,アミューズメント,案内等)
(3)一般家庭用(掃除,警備,見守り,介護,対話型家電,情報端末等)

課題3:ロボットの最先端技術
この課題は,ロボットを構成している最先端技術を知って頂くことを目的としている.
ロボットに使われている最先端技術を調査し発表する.発表では,紹介する技術のどこに新規性あるいは/および有用性があり,ロボットがどう進化したか説明すること.できれば,ロボットの進化で世の中がどのように変わると思われるか述べる.
技術は,下記の参考資料に示すように,基礎研究段階から,現場で実用可能な段階のものまで,様々な段階があり,各々の段階にはそれぞれの段階ごとの最先端技術が存在する.調査研究にあたっては,対象とするロボット技術がどの段階のものであるか判断し,その中で何が最先端技術なのかを確認すること.
<検討のヒント>
・新規性の説明については,これまで用いられていなかった原理原則・法則・方法・個別の方法の組み合わせ方により,課題を解いていることを述べ,なぜそのやり方を用いることができるようになったかを論じる方法がある.
・有用性の説明については,同じ機能をより低コストで実現したこと,同じコストでより多くの機能を実現したこと,コストはかかるが今までできなかったことを実現したこと,などを論じる方法がある.
・ロボットの進化については,例えばロボットによる作業効率や,ロボットのプログラミング時間・手間の短縮効果を論じる方法がある.
・世の中がどのように変わるについては,ロボットの使用前・使用後の現場の景色の変化や,人の働き方,ライフスタイルの変化,常識の変化を論じる方法がある.


3.公開発表会:同時通訳付き

 3日,10:00~14:00,会議棟7階 703会議室において,公開研究発表を行った.
参加した13校により,国際ロボット展の調査結果の報告を行ってもらった.各校の発表持ち時間は13分で,全ての発表が規程時間内で終了.展示会場での調査及び発表データ準備時間が短時間に限られていたにも関わらず,いずれの発表も素晴らしいものであった.


<各校の発表内容と研究発表の課題>

報告校(クリックで発表データ参照) 選択課題
FIEC - Fundação Indaiatubana de Educação e Cultura(ブラジル) 課題2:ロボットの使途とその性能の関係
(2)非製造業向け
栃木県立宇都宮工業高等学校 課課題3:ロボットの最先端技術
Waialua High & Intermediate School(米国) 課題1:産業用ロボットの設計と基盤技術の体系化
(2)機械要素
豊田工業高等専門学校 課題2:ロボットの使途とその性能の関係 (1)製造業向け
(1)製造業向け
Pui Ching Middle School, MACAU(中国)
動画
課題2:ロボットの使途とその性能の関係
 (2)非製造業向け
和歌山工業高等専門学校 課題2:ロボットの使途とその性能の関係
(3)一般家庭用
National Junior College(シンガポール) 課題2:ロボットの使途とその性能の関係
(2)非製造業向け
岐阜県立飛騨神岡高等学校 課題3:ロボットの最先端技術
CETIS 26 Technical High School(メキシコ) 課題2:ロボットの使途とその性能の関係
(2)非製造業向け
宝仙学園高等学校 課題3:ロボットの最先端技術
Seoul Robotics High School(韓国) 課題2:ロボットの使途とその性能の関係
(1)製造業向け
立命館慶祥高等学校
動画
課題1:産業用ロボットの設計と基盤技術の体系化
(2)機械要素
Caritas Don Bosco School(フィリピン) 課題3:ロボットの最先端技術

4.表彰式:

a)研究発表全13件の中から下記の4校に対し,優秀賞:IRH 2017 Best Study Report Awardを贈賞させて頂いた.

Caritas Don Bosco School(フィリピン)

National Junior College(シンガポール)

Waialua High & Intermediate School(米国)

宝仙学園高等学校

※クリックで拡大

報告内容は,研究報告評価シートに示す評価観点に基づき,6人の審査員により審査した.


b)生徒の皆さんをご指導頂いた各校の先生方には,感謝状:Testimonial for Study Report of IRH 2017を進呈させて頂いた.


c)IRH2017の参加者全員には,参加証:Certificate of IRH 2017を進呈させて頂いた.



d)総評:
優秀賞対象の選定のために,あえて各発表に対し評点評価をさせて頂いたが,実態としてはいずれも甲乙つけがたい素晴らしい発表で,各発表の総合評点の差異は僅差であった.発表時間は全件規程内に余裕をもってまとめて頂き,発表態度,発声,メリハリ,マナーも通常の学術講演会の大学生の発表レベルを凌駕するものがあり素晴らしかった.さらに,研究内容自体に関しても,事前にしっかりとした準備をして頂き,聴講者を引き付けるための工夫もあり,短い現地調査時間にも係らず,しっかりと分かり易く報告をまとめて頂いた.生徒の皆さんの日常の研鑽と,先生方の素晴らしいご指導に改めて敬意を表したい.


写真・動画アルバム

以下に、IRH2017中に撮影した写真及び動画を掲載しておりますのでご覧ください。
写真のWebアルバム
動画のWebアルバム

IRH2017を終えて

皆様のご協力のお蔭で,IRH2015に続き成功裏に第3回インターナショナルロボットハイスクールが実施できましたこと,最初に御礼申し上げます.
今回は,前回に引き続き,国外からの多くの御参加を頂き,結果として,前回の115人を上回る,総勢129名の御参加を頂き,内93名は国外からの御参加で,本格的な国際教育事業になってきました.また,協賛企業についても,前回並みの4社にご協力頂き,本企画が,社会的にも認められてきたものと,主催元として喜びに堪えません.
前回同様,今回の企画より,多くの国内外の高校とのネットワークができたのは今回の企画の成功に並ぶ大きな財産であると思います.
国際ロボット展の規模は回を追うにつれ拡大しており,今年度は前回の1.3倍の参加団体規模となり,さらに各々の展示内容もより充実したものとなっておりました.今回は前回開催時の反省に基づき,展示会の見学に十分な時間を取れるように配慮させて頂きました.このことにより,参加された生徒の皆さんが,ロボット技術,ロボットが活躍する社会に対し,より一層の興味を持って頂けたものと考えます.
研究発表については,事前にテーマを選択頂き,開催前に事前研究を進めて頂く形式にさせて頂きました.このことにより,より深い学習をして頂けたものと思います.2日目の研究発表については,前回同様,素晴らしい発表をして頂きました.発表時間厳守で堂々とした発表マナー,ビジュアルにも分かりやすく工夫された発表資料,聴衆の興味を引く工夫等,高校生のレベルを超えた大人顔負けの発表に,改めて審査スタッフも脱帽致しました.これも,常日頃の生徒の皆さんの学業,生活姿勢の賜物,また御指導された先生方の多大なご尽力のお蔭と考えます.
来年度の2018年には, Japan Robot Week (JRW) 2018の開催に加えて,World Robot Summit (WRS) 2018(2020年度開催のWorld Robot Summit本大会のプレ大会)が開催され,世界最先端ロボットの展示と,ロボット技術競技をご覧いただくことができます.インターナショナルロボットハイスクールは,これまで国際ロボット展の併設事業として奇数年度に開催してまいりましたが,JRW2018及びWRS2018の併設事業として,第4回インターナショナルロボットハイスクールIRH2018を,2018年10月19日(金),20日(土)に,東京ビッグサイトにて開催することに致しました.IRH2015,IRH2017共に国際ロボット展の開催に併せるために,12月上旬の開催となり,国内の多くの高校の期末試験期間に重複するという問題がありましたが,2018年度開催は10月下旬になるため,ご参加が容易になるものと思います.多くの皆様の御参加を期待しております.
 最後に,本企画に参加し活発な活動をして頂いた生徒の皆さん及びご指導の先生方,参加者の皆さんを快く送り出して頂いた各参加校の校長先生をはじめとする教職の皆様,本企画の場とご支援をいただいた共催の日刊工業新聞殿及び日本ロボット工業会殿,協賛により財政支援頂いたロボコンマガジン(オーム社)殿,トヨタ自動車株式会社殿,三菱電機株式会社殿及び株式会社安川電機殿,忙しい中ご尽力いただいたIRH2017実行委員会委員の皆様に改めて感謝申し上げます.

以上

実施報告書書面のpdfデータ

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