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倫理綱領

2014年10月7日 一般社団法人日本ロボット学会第39回理事会にて制定

(前文)
一般社団法人日本ロボット学会は設立以来,多くの優れた技術者・研究者その他協力者の参加を得て,ロボット学の振興と,ロボット産業の発展に寄与してきた.ロボットは,産業用・非産業用を問わず,社会生活および家庭生活の質を高めることを目的とした技術分野である.また,その存在意義が社会科学面から多く議論されることも特徴的である.従って,全ての関係者は,科学技術を追求する者として備えるべき基本的な行動規範とともに,ロボットの人や社会との適切なかかわりに配慮をする必要がある.これをふまえ,本学会会員が遵守すべき基本的な行動指針として

・健全な社会の実現と維持のための科学技術を追求する
・適切な社会規範に常に従い公平で公正な活動を行う
・自分自身の研鑚を怠らず周縁の啓発向上に貢献する

を旨とした倫理綱領を以下に制定する.

  1. 社会的責任 会員は,自らの活動目的が,安全で健全な社会が求める技術進歩への貢献であることを常に認識し,かつ,知見・技術の応用や教育に関する波及効果が多大であることを認識し.活動成果については、信頼性ならびに、ヒト・自然環境・社会に対する安全性に関して,常に専門家としての責任を負う. また会員は,実現目標の設定によっては,ロボット技術が社会の健全性を損なう方向に展開する可能性があることも認識する必要がある.万が一,人類に害を与える,環境を破壊する,安全衛生・社会福祉を阻害するなどの流れに遭遇した場合には,良心と信念を持ってこれを公開し,勇気をもってこれを断つべきである.
  2. 公正な活動 会員は,研究開発などの行為において,真実に基づき,公正であることを重視し,誠実に行動する.研究・調査データの記録保存や厳正な管理・取扱いを徹底し,ねつ造,改ざん,盗用などの不正行為をなさず,加担しない.また科学技術に関わる普遍的な問題に対しては,特定の権威・組織・利益に偏らない立場から討議し,不合理な利益相反行為に陥ることなく,責任をもって結論を導き,実行する.万が一,自らの,あるいは関係者の公正さへの疑問に遭遇した場合は,躊躇することなくその旨を公開し,是非を世に問う行動を求める.
  3. 社会規範・法令の遵守 会員は,いかなる状況下においても社会規範,法令および関係規則を遵守する.そのためには自らの行為がどのような社会規範,法令および関係規則に関わるかについて常に意識する必要がある.さらに国際的に通用する規範と各国のローカルな規範の差異についても認識を深める必要がある. また会員は,知的財産権保護や個人情報等機密保持など,他者との間に社会規範的にあるいは法的な関わりが発生する場合には,契約等にて相互の関係の明確化をはかる.
  4. 公平性の確保 会員は,性別,年齢,所属,国籍,人種,思想,宗教,あるいは社会的地位や肩書きなどによる偏見を持たず,個人の人権と人格を尊重する.
  5. 自己の研鑽と向上 会員は,技術専門職上の能力と人格の向上に継続的に努める.また,単に技術的側面のみならず人間社会の理解を深めることが必要である.さらに,日々変化する社会環境において,自らの学術的・技術的能力と社会への造詣を同時に高める不断の努力が必要である.
  6. 他者との協力と尊重 会員は,常に真摯な態度で健全な討論を行い,他者の批判には謙虚に耳を傾け,研究開発活動を通じた相互研鑚に努める.また,他者の成果・業績を正当に評価し,複数の協力者による成果については,貢献者の寄与と成果を尊重する.
  7. 研究対象の保護 会員は,研究対象を含む研究協力者の人権,人格を尊重し,安全,福利,個人情報の保護等に十分な配慮をする.さらに,研究対象である人間以外の生物についても,実験などに伴う無用な苦痛の低減に対する配慮,生態系の保護や自然環境への影響などを十分考慮し,慎重かつ真摯な態度でこれを扱う.
  8. 活動環境の整備 会員は,責任ある学会活動の実施と公正な環境の確立・維持も自らの重要な責務であることを自覚し,有形無形の活動環境の質的向上に積極的に取り組む.また,これを達成するために社会の理解と協力が得られるよう努める.
  9. 教育と啓発 会員は,自己の専門知識と経験を生かして,将来を担う技術者・研究者の指導・育成に努める.また得られた知的成果を,解説,講演,書籍などを通じて公開に努め,人々の啓発活動に貢献する.