会長挨拶
日本ロボット学会会長就任挨拶
一般社団法人日本ロボット学会
会長 久保田哲也 (川崎重工業)
(2025・2026年度)
本年から2年間,会長を務めさせていただくことになりました.学生の主体的活動や,国際会議への参加促進を進めてきた菅野前会長の取り組みを引き継ぎ,学会の活性化を図りたいと考えています.
日本はロボット大国と言われてきました.産業用ロボットが生まれたのは米国ですが,当時の日本人はこのロボットに大きな期待を抱き,貧弱な処理能力しか持たないロボットを工夫して自動車製造・電機製造に適用し,世界に先駆けてひとつの産業を形成しました.また,日本にロボットの学会を発足させて国際会議を主催し,ヒューマノイドなど時代を先取りするテーマへの取り組みを開始して,世界のロボット研究を牽引してきました.これらの実現には,並々ならぬ努力があったはずで,諸先輩方には脱帽の思いであります.
現在,ロボット分野における米国と中国の著しい台頭で,日本は影が薄くなった感がありますが,日本人のロボットに向けた情熱は,これらの国に負けているとは思いません.先人たちの熱意や決意を踏襲すれば,例えばAIブームのなかでその有用性を的確に見出し,これを生活空間,製造工程,災害現場,あるいは宇宙開拓へ適用することで高機能なロボットを実用化して,世界に発信できると確信しています.また,日本が従来持つ,ロボットを仲間,あるいは人間を取り巻く社会の一部と考える特別な発想を大事にすることにより,世界が注目するパラダイムを構築できると期待しています.
日本ロボット学会は,この実用化・発信を含む研究プロセスをサポート・加速する役割を担います.具体的には,まず発信力が弱ってきた状況を打開するため,国際会議における日本からのプレゼンテーションを容易にする仕組みづくりを継続します.ただし,海外へ目を向けるだけでなく,国内の,例えば産業分野でロボット実用化の源泉になるシステム化技術の発展にも貢献できるように,国外・国内の2本立ての活動を大事にしたいと思います.また,家電,車,あるいはサービスなど,あらゆるモノ・コトがロボット化する時代の到来で当学会の対象は広がり,それに伴い多様化を進めていますが,まだ偏重がありますので,学問領域,産業分野をより多彩にすべく行動します.「ロボット學」を扱う当学会の本質的あり姿としてダイバーシティを実現し,工学や製造業だけが創るわけではない未来への対応としたいと考えています.
人々が,ロボットの進化の方向に注目しています.会員の皆様と共に,ロボット研究者,そして世の中の期待に応えられるような学会を目指していきたいと思いますのでよろしくお願いします.